桑野隆

伊東一郎（いとう・いちろう）早稲田大学文学学術院教授

はじめに―地域としてのロシア・中欧・バルカン／言語圏としてのロシア・中欧・バルカン／言語概説／地域を結ぶもの―民衆文化―地域を分かつもの―宗教/地域を分かつもの―地理的条件／地域を分かつもの－歴史の刻印／まとめとして

１．20世紀～21世紀初頭のロシア語

桑野隆

多民族国家ロシア／多民族国家ロシア／ロシア語の位置／消えゆく言葉と生まれくる言葉／グローバリゼーションと外来語／自由化とスラング／今後の動き

２．スラヴの文字と文化―グラゴール文字とキリル文字の来歴が示すもの―

小林潔（こばやし・きよし）神奈川大学外国語学部特任准教授

スラヴ語の文字／グラゴール文字とキリル文字の成立／ロシア文字/文字の来歴が示すもの／文献案内など

３．ベラルーシのことばと文化

佐藤純一（さとう・じゅんいち）東京大学名誉教授

ベラルーシをめぐる歴史／ベラルーシの国土と住民／ベラルーシ語の歴史／ベラルーシ語とはどんなことばか／ベラルーシ社会の言語事情／ベラルーシの文化的多様性

４．チェコ／スロヴァキア／チェコスロヴァキア―名乗りと名付けのエトノニム―

長與 進

民族名「チェコ人」の起源／年代記のなかの「チェコ人」／スラヴ人としての「スロヴァキア人」／民族名「スロヴァキア人」の定着をめぐる錯綜した経緯／「スラヴ・ボヘミア語」から「チェコスロヴァキア語」へ／「チェコスロヴァキア語」の変容と改革

５．バルカン半島の諸言語とバルカン言語学

野町素己（のまち・もとき）北海道大学スラブ研究センター准教授

バルカン半島の諸言語／「言語統合」とは何か？／バルカン言語学の歴史／バルカン諸言語の分類／バルカニズム：バルカン諸言語の共通特徴／バルカニズムの起源／バルカン言語学の課題

６．ルーマニアの言語と文化の生成と発展

倍賞和子（ばいしょう・かずこ）ルーマニア語講師

はじめに／ルーマニア民族の祖先ダキア／ローマの後裔としてのルーマニア／スラヴ民族の移動／ルーマニア語はロマンス語かスラヴ語か？／ビザンチン帝国とルーマニアの宗教／オスマントルコとルーマニア料理／バラード”ミオリツァ”に見られるルーマニア人の死生観／「隣の芝生」の時代から悲願のＥＵ加盟へ

７．ハンガリー文学にみる民族滅亡のモチーフ

早稲田みか（わせだ・みか）大阪大学世界言語研究センター教授

ハンガリー人のルーツ／民族滅亡のモチーフ／小民族意識と被害者意識

８．20世紀末のポーランド・ロマン主義―アダム・ミツキェヴィチの映画化をめぐって―

久山宏一（くやま・こういち）東京外語大学等非常勤講師

はじめに／ポーランド・ロマン主義　11月革命　ミツキェヴィチ／11月蜂起後の３部作／『父祖の祭　第三部』と『パン・タデウシュ』／1989年―タデウシュ・コンヴィツキ監督『溶岩流―アダム・ミツキェヴィチ「父祖の祭」物語』／1999年―アンジェイ・ワイダ監督『パン・タデウシュ物語』／まとめ

９．現代ロシアのアートシーン―グローバル化と「過去」のはざまで

神岡理恵子（かみおか・りえこ）日本学術振興会特別研究員

はじめに／モスクワ・ビエンナーレの開催／多様化する展示スペース／キュレーターの活躍／過去の帝国「ソ連」、そして前景化する「強いロシア」／おわりに

１０．ウラジーミル・ダーリ生誕200年と『ダーリの辞書』

源貴志（みなもと・たかし）早稲田大学文学学術院教授

ロシアのグリム（ウラジーミル・ダーリ）／ダーリの「詳解辞典」／歿後の改訂（第２版と第３版）／ソヴィエト時代（第２版の重版）／自由経済化のダーリの辞書

１１．ユートピアとリアル・ポリティクス―マール、スターリン、普遍言語の問題―

グレチェコ・ヴァレリー早稲田大学教育学部非常勤講師

はじめに／マールの言語学構想における普遍言語／スターリンの位置：普遍言語と民族問題／結論

１２．ナショナリズムとユーゴスラヴィア理念の相克―「セルビア・クロアチア語」を中心に

山崎信一（やまざき・しんいち）東京大学教育学部非常勤講師

はじめに／「セルビア・クロアチア語」に関して／「セルビア・クロアチア語」文章語の成立と展開／ユーゴスラヴィア解体と「セルビア・クロアチア語」の解体／おわりに

１３．ロドピ地方の牧羊と移動労働―多言語・多宗教・多民族共住の地域社会から―

寺島憲治（てらじま・けんじ）東京外語大学講師

はじめに／国境のなかった頃／ロドピ地方の牧羊業／冬営地と多言語環境／牧羊業と羊毛産業／出稼ぎと移動労働／人とともに移動するもの：情報と民衆歌謡／義兄弟の聖者たち／国境・国語・国教

１４．「辺境」という名のトポス―地名で読むウクライナの世界

原田義也（はらだ・よしなり）早稲田大学国際言語文化研究所客員研究員

廣野の名もなき墓標／ウクライナの遠景／豊穣なる大地とともに

１５．言語の復興―カレリア語の挑戦

土岐康子（とき・やすこ）明治大学非常勤講師

はじめに／１９２０－３０年代のカレリア自治共和国の言語政策／ソ連崩壊後のカレリア共和国とカレリア語／終わりに―多民族社会の中で